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【執筆者 澤井悦郎

 

マンボウ類を生まれて初めて見た時、ほとんどの人が「なんじゃこりゃ!」と思ったことだろう。それほどまでにマンボウ類の形態は独特で、一度見たら忘れられないほど特徴的な外観をしている。

 

作家・北杜夫が「とにかくこいつの形態はベラボーであり、やはりアタオコロイノナ(※マダガスカル神話の神で「何だか変てこりんなもの」を意味するとされる)の息のかかった代物としか思えない」と著書に書き、マンボウを気に入って自らを「どくとるマンボウ」と名乗ることにしたのは有名な話である。

 

しかし、マンボウを見たことがある人でも、実物を見ずにマンボウの絵を描いてもらうと、実在しない謎の魚を描かれることが多い。そこで、本記事では水族館でも観察できる外部形態に焦点を当て、マンボウ類の代表的な体の特徴を解説しよう。

 

マンボウ科魚類の詳細な形態は種によって異なるが、それは分類の記事で詳しく説明するとして、ここではマンボウ科の代表として日本近海で得られた〝マンボウMola mola〟の成魚を使って、外観からわかる体の各名称(英名はすべて単数形で)を解説する。

 

 

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マンボウMola molaの外部形態

 

〝マンボウMola mola〟は楕円形の胴体に、背鰭(せびれ:dorsal fin)、臀鰭(しりびれ:anal fin)、胸鰭(むなびれ:pectoral fin)、舵鰭(かじびれ:clavus)の4つの鰭が付いている。

 

背鰭と臀鰭はほぼ同じかまぼこ状の形で正反対の位置に付いている。胸鰭は左右にあり、丸い。背鰭と臀鰭の一部が変形してできた舵鰭は体の一番後ろにある鰭で、よく「体の後半が切り落とされたような截形(せっけい)」と言われる。背鰭・臀鰭・舵鰭の基部には胴体とつながる触って滑らかな帯状部があり、帯(smooth band)と呼ばれる。舵鰭後端には丸くて硬い骨板(ossicle)がいくつかある。

 

眼(eye)は丸く小さく、眼の少し前に2つの鼻孔(nostril)がある(つまり鼻孔は左右で計4つ)。口(mouth)は小さく、前方に突き出ない。胸鰭の前には楕円形の鰓孔(えらあな:gill opening)があり、鰓膜(さいまく:gill membrane)によって開閉する。肛門(anus)はヒトとは位置が逆で、尿や卵・精子が出る泌尿生殖孔(urogenital opening)よりやや前にある。

 

他にも目立った外部形態の特徴を持つ種はいるが(カクレマンボウなど)、上記の特徴を押さえていればOKだ。ちなみに、今のところ、マンボウ科すべての種において、雌雄を識別できる外部形態の形質は見つかっていない。

 

 

マンボウ類と一般的な硬骨魚類の違い

マンボウ科の代表的な外部形態を知ったところで、マンボウ類が一般的な他の魚(硬骨魚類)と外観的にどう違うのか?というところについても解説しよう。

 

マンボウ類の代表は引き続き〝マンボウ〟、一方、一般的な硬骨魚代表は名前が似ているアカマンボウを挙げる(※従来1種とされていたアカマンボウLampris guttatusは現在5種に分かれたが、私はアカマンボウには詳しくないので写真の種がどの種なのかはわからない)。

 

 

パッと見では確かにどちらも体型が丸いので、似ているように感じるかもしれない。しかし、鰭に注目すれば違いは明確である。

 

マンボウ科魚類には一般的な硬骨魚が持っている尾鰭(caudal fin)と腹鰭(pelvic fin)が無い。また、マンボウ科魚類は鰓孔が切れ込んでおらず、小さい円形の孔(フグ目魚類の特徴)である。マンボウ科魚類は硬骨魚類の中でも単純化した形態をしていると言われる(タチウオはもっと鰭が少ない)。

 

より詳しい外部形態や内部形態については、著書『マンボウのひみつ』をご覧いただきたい。

 

著書

  【執筆者 澤井悦郎】   「澤井悦郎.2017.『マンボウのひみつ』.岩波書店.東京,208pp.」は、運営者が初めて執筆した中学生(以上)向けの一般書である。   […]

 

 

参考文献

岩井保.2005.『魚学入門』.恒星社厚生閣,東京,224pp.

木村清志(監修).2010.『新魚類解剖図鑑』.緑書房.東京,216pp.

北杜夫.1960.アフリカ沖にマグロを追う.In:『どくとるマンボウ航海記』.新潮文庫,東京,pp.87-97.

澤井悦郎.2017.『マンボウのひみつ』.岩波書店.東京,208pp

澤井悦郎.2019.『マンボウは上を向いてねむるのか: マンボウ博士の水族館レポート』.ポプラ社.東京,207pp

 

 

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作成日:2020年7月16日 更新日:2020年7月19日

 

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