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「食」としてのマンボウ

 

【執筆者 澤井悦郎

 

マンボウは食用魚としてのイメージを持つ人は少ないと思うが、食べることのできる魚である。フグ目魚類ではあるものの、マンボウ自体が明確に毒を持っていたという研究は今のところみられない。しかし、台湾でヤリマンボウを食べて食中毒を起こした事例が1件報告されている(Huang et al., 2011)。ちなみに、私はカクレマンボウ以外の4種(〝マンボウ〟、ウシマンボウ、ヤリマンボウ、クサビフグ)の肉を食べたことがある。

 

意外に思うかもしれないが、食としてのマンボウの歴史は古く、世界的には少なくとも1550年代から知見がある(澤井,2017)。今のところ1636年に著された『料理物語(寛永十三年版)』が日本最古のマンボウ料理の知見である。『料理物語(寛永十三年版)』には「さしみしらめてしゃうがす すい物によし」と2文あり、刺身にお湯をかけて冷やしてから生姜酢で食べたり、お吸い物にも良いことが書かれている。

 

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マンボウに食としてのイメージがほとんどないのは、スーパーの鮮魚コーナーに置くには大き過ぎるため、あまり魚体丸ごと売られていないからと思われる。しかし、マンボウを伝統に食する沿岸地域(岩手県、宮城県、三重県、高知県などが有名)では地産地消され、季節になると切り身になったマンボウや料理されたマンボウが普通にスーパーで売られている。ちなみに、「マンダイ」という名で売られているのはアカマンボウであるため、注意が必要だ。

 

 

マンボウが都市部にあまり出回っていない理由は、肉の水分含量が多く(Davenport et al., 2018)、すぐに生臭くなってしまうためである。しかし、冷凍技術と需要が高まってきた現代ではインターネット通販で買うこともできる。

 

一般的にスーパーで売られているマンボウの可食部は筋肉、消化管(腸)、肝臓である。他に皮下ゼラチン層、軟骨、卵巣も食べられ、漁師によると精巣、心臓、眼なども食べられると聞いたことがある(澤井,2017)

 

 

筋肉は刺身にして酢味噌で食べるのが伝統的な食べ方だ。筋肉は結構弾力があり、生で食べるとイカ刺しの薄いような味(おいしくないと感じる人も多い)、火を通すと固まって鶏のササミのような食感になる。消化管はシンプルに塩焼きで食べると焼き鳥のようなコリコリした食感で美味。肝臓は炒めて脂を捨てた残りに味噌と肉をあえた肝和えがおいしい。肝臓は寄生虫が多く付いているため、火を通して食べた方が良い。

 

日本ではほぼ〝マンボウ〟しか食べることができないが、台湾でマンボウという名で食されているのはほぼヤリマンボウである。マンボウ食通の漁師によれば、種や大きさによって味が少し変わるという。ググったらいろいろ出てくるが、マンボウはまだまだ未知の食材であるため、マンボウを食べられる店やマンボウ料理は別のトピックで紹介したい。

 

 

参考文献

Davenport J, Phillips ND, Cotter E, Eagling LE, Houghton JDR. 2018. The locomotor system of the ocean sunfish Mola mola (L.): role of gelatinous exoskeleton, horizontal septum, muscles and tendons. Journal of Anatomy. 233(3): 347-357.

Huang K-M, Liu S-M, Huang Y-W, Huang K-L, Hwang D-F. 2011. Food Poisoning caused by sunfish Masturus lanceolatus in Taiwan. Journal of Food and Drug Analysis. 19(2): 191-196.

松下幸子・山下光雄・冨成邦彦・吉川誠次.1982.古典料理の研究 () : 寛永十三年「料理物語」について.千葉大学教育学部研究紀要. 2部.31:181-224.

澤井悦郎.2017.『マンボウのひみつ』.岩波書店.東京,208pp

 

 

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作成日:2020年7月28日

 

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